子ども文庫の会について


子ども文庫の会は、1964年のバージニア・リー・バートン女史来日の折、バートン女史を囲んで、石井桃子女史、松岡享子女史が、これからの日本の子どもの本について話し合われた会に、山本まつよも同席した辺りから形をとりはじめました。山本は、公共図書館だけに頼れない状況の中、身近なところに家庭文庫を、ということで、まずは自宅での文庫から始め、その後、新宿区若葉に子ども文庫の会の事務所を開設。そこでの“わかば文庫”の活動に加えて、1967年には、キャサリン・ストーアの『ルーシーのぼうけん』『ルーシーの家出』、1968年には、アイバン・サウスオールの『燃えるアッシュ・ロード』の翻訳、出版。この頃から、子どもの本の理解を深めていくためのセミナーの活動も加わりました。
2021年1月1日から、青木祥子が代表となり活動を続けていましたが、山本まつよの遺したものを引き継ぐために、2023年6月2日から、一般財団法人 子ども文庫の会となりました。代表理事は青木祥子。

創立者・山本は、当初の目的について、

心身ともに日々成長していく子どものために、図書館は欠くことのできないものです。日本では、まだ、子どもたちが楽しく利用できる公共図書館が少ないので、個人の家庭を開放しての、家庭文庫がぜひほしいものと思います。「子ども文庫の会」は、その家庭文庫が、“ポストの数ほど”多くなることを願い、かつ、子どもと本の問題を明らかにしたいと願って、ごくささやかに仕事を続けています。

と書いています。

※バートン女史来日時の写真。

◇山本まつよ プロフィール(1923年-2021年)
神戸女学院卒。山陽新聞、アジア財団を経て、子ども文庫の会創立。代表として45年間、家庭文庫振興、翻訳・出版、本の楽しみを深めるセミナー活動に従事。子ども文庫の会から『ルーシーのぼうけん』『ルーシーの家出』『燃えるアッシュ・ロード』『黒ネコの王子カーボネル』『ギリシアの神々の物語』『ブラック・サンボくん』『ラーマーヤナ』『赤ぼうしちゃん』『ぼくは なにいろの ネコ?』などの翻訳、出版。児童書以外の翻訳書は、F・ショニール・ホセ著『仮面の群れ』『民衆 上下』、ニック・ホアキン著『二つのへそを持った女』(すべて、めこん刊)





子ども文庫の会の季刊誌 子どもと本


 季刊『子どもと本』は、1980年4月に第1号を創刊して以来、年4回(1月、4月、7月、10月末)の発行を続けています。  創刊の言葉は、以下の通りです。

わたくしたちが子ども文庫の会に集まって子どもの本を読み始めて、かなりの年月を重ねました。ほとんどが、家庭文庫や地域文庫で子どもとともに本を読んでいる母親たちで、子どもにどんな本がよいのかが、切実な問題でした。 ……しかし幸いにも、わたくしどもは非常にすぐれた入門書に出会いました。アメリカのメイ・ヒル・アーバスノット著『子どもと本(Children and Books)1964年版』です。もっとも初歩の基本的な手引き書として申し分ないものでした。この本を読んで初めて、わたくしどもは、系統的に子どもの本を読むための具体的な道を発見しました。絵本、わらべうた、詩、民話、神話、叙事詩、ファンタジー、その他の創作といった順序で、すでに評価の定まった本を1さつずつ読むほかないことが、よくわかりました。そして1さつずつ読んできて、「子ども主体」と思っていた世界が、実は「人間同志」の世界であることに気がつきました。子どもと大人の間に、大人が考えるような区別はなく、もし両者の間に差があるとすれば、子どもの感得力は大人のそれを遙かに越えているのに対し、大人は実体験が多いということでしょう。そして本を通して知った生きることの美しさと、真実と、楽しさとを、お隣さんに語りたくなって、この小誌をつくりました。



「子どもと本」の記事の中で、最も大切にしているのは、“子どもの好きな本のリスト”で、とびきりすぐれた本を紹介しています。家庭文庫をするにも、小学校で本を読むにも、大切なことは、1にも2にも3にも4にも、本を選ぶことだと考えているからです。この姿勢は、40年近く経った今でも変わらないつもりです。子ども時代にぜひ出会ってほしい、そして、わたくしたち大人が、新しい本を評価するときの基準になるはずの、心躍る本を選んでいます。その性質上、創刊号から最新号まですべてのバックナンバーを揃えています。  “子どもの好きな本のリスト”“リストに加えたい絵本と本”の他には、子どもの本の質、楽しみの質を考える糸口になる記事、古典やそれに肩を並べるような本をさらに深く楽しむ手引きとなる記事、家庭文庫活動や、小学校の図書室活動など、子どもと本を読んできた方々の実践の様子などを載せています。

 何号にどの本について書いているかは、書名、著者名から検索できます。また、特集記事、連載の物語も検索できます。
(第1号〜50号、第51号〜100号、第101号〜150号、第151号以降の4ページに分かれていること、ご注意ください。「、」や「・」を含まない単語で検索してください。作者名や画家名は、姓か名前のみのほうが確実です。長い本の題名などは、題名に含まれる一部でも検索できます。
例:ビアトリクス・ポターは、’ポター’ か、’ビアトリクス’ で検索。「ふわふわしっぽと小さな金のくつ」は、’ふわふわしっぽ’ や ’金のくつ'でも出てきます。)

子どもと本のバックナンバーはこちら



わかば文庫

わかば文庫は、子ども文庫の会の事務所の1室で開いている小さな文庫です。2歳半以上のお子さんなら、どなたでも入会できて、本を借りることができます。公共図書館には、本はたくさんありますが、ありすぎてどれを選んだらいいかわからない、という方が多いのではないでしょうか。わかば文庫の蔵書はとても少ないですが、わたくしどもが子どもと一緒に読んできた経験から、子ども時代にぜひ読んでほしい本を選んでいます。



毎週水曜日 14:30〜17:00 (祭日と、年始の三箇日に重なった日は休み)
場所:渋谷区元代々木町49-23 セブンスターマンション代々木八幡202号室